高知大学の集中講義「土佐の海の環境学(柏島の海から考える)I,II」を実施します。

月日:2007年8月23日-8月28日
場所:高知大学(8/23-24,28)、黒潮実感センター(8/25-27)

このうち、黒潮実感センターで開催される現地講義2つと座談会では、地元住民や一般の方々にも参加していただきたいと思います。関心のある多数の方々のご参加をお待ちしております。詳細は黒潮実感センターまでご連絡下さい。
TEL:0880-62-8022
E-mail:kuroshio@divers.ne.jp (スタッフ共通)

授業テーマと目的:本講義では、高知県の柏島の海とそれに関わる人間の生活や社会を題材に、広く海の環境問題とその解決策について考えることを通して、海と人間の間の豊かな関係を何かということを実感することを目指す。そのために、座学の講義で自然科学・社会科学の両面から海の環境問題についてアプローチすると共に、実際に柏島の海に触れ、地域住民とコミュニケートするフィールド実習を行い、それぞれが現場から問題を考えていく場を提供す る。 黒潮により強い影響を受ける高知の海は、緯度が高い割にその沿岸域で造礁サンゴ類の発達が顕著である。発達したサンゴ群集 は、魚類をはじめとする海洋生物にとってよい生息場・摂食場所になるため、多様な生物を引き寄せる。高知県西南部にある柏島の海もそのような場所である。 柏島の周辺海域は、広範囲にわたるサンゴの群生がみられるとともに、143科884種もの魚種の生息が確認されている。日本で現在確認されている魚類の 1/4が生息しており、日本一多様な魚類相を誇っていると言っても過言ではない。希少な魚類も多く見られることから、近年この海域はダイビングスポットと して有名になり、県内外から多くのダイバーが訪れるようになった。しかしそれに伴い、海中の生物相が荒廃したり、漁民とダイバー・ダイビング業者の紛争などが頻発したりするなど様々な問題が生じている。 このような形の問題は実は非常にありふれたものであり、世界各地で人の生活や経済活動と自然・ 環境とのコンフリクトが起きている。現地の人たちはもちろん、我々はすべてこの「自然」を元手に生きており、絶対的に自然の利用を禁ずることは問題の解決 にならない。むしろいかにしてこの元手を食いつぶさない形で我々が豊かに生きていくかということこそが問われているのである。 そのためには、我々はまずこの身近な自然について知らなければならないし、どのような形で自然を痛めつけているかを知らなければならない。そして、そのような知見を元に、 自然環境を保全しつつ活用していく新たな社会・経済的な仕組みを構想し、それを実現していくための方法論について考えていくべきであろう。この講義では、自然科学と社会科学の両者を動員して問題を解きほぐすと共に、自らの身をフィールドに置くことによってより実感を持ってこのような課題を考えていく。

授業計画:

「島が丸ごと博物館」柏島の海の魅力(神田)
高知市近郊のサンゴ「礁」とそこに集まる魚たち(山岡)
柏島周辺の魚類(遠藤)
柏島の海にまつわる化学(大谷)
柏島の海をめぐる問題(神田)
柏島の海の法律問題: 権利関係と利用調整(三浦)
ガイダンス/柏島踏査/夜の海辺の生き物観察/海洋漂着物調査(ビーチ・コーミング)
シュノーケリング練習/シュノーケリングによる海洋生物観察/ビデオ視聴とそれに基づく討論
現地講義1 鳥からみた柏島 鯨からみた柏島(山下@空間生態研究所・高橋@高知大学)
現地講義2 持続可能な「里海」づくり:自然と共存する処方箋(神田)
座談会
海業の発想と実践-柏島問題の解決に向けて-(婁)
サンゴの海の経済問題:そのパースペクティブ(新保)
グループ・ディスカッションとプレゼンテーション

担当教官所属:高知大学、神奈川大学、東京海洋大学、黒潮実感センター

履修希望学生に求めるもの:高知県の海の生物や環境、あるいは海と人間・社会との関係に関心のある人、海の研究の面白さを実感したい人。

キーワード:高知県の海, 柏島, 環境, 生態系,造礁サンゴ, サンゴ礁, 魚類相, 形態, 分類,南方系魚類,生物多様性,環境の経済評価, スキューバ・ダイビング, 海の管理と利用調整, 海業, 環境教育, フィールド・ミュージアム, サンゴ食害生物, 摂餌行動刺激物質, トコロテン, 海底地形

更新: admin /2008年 08月 31日 17時 10分